訪問理美容師になるには?必要な資格や知識を解説

2021.11.25

訪問理美容師とは?

訪問理美容師は福祉理美容師や介護理美容師と呼ばれることもあり、介護・介助が必要で外出が出来ない方などに向けて、自ら介護施設や病院、自宅へ訪問してカットやカラーなどの理美容サービスを提供する職業です。通常の理美容業では認可を得た店舗でしか施術を行えませんが、下記の様な場合に限り、訪問先での営業が可能となります。

 

・怪我や病気で外出が困難な方

・介助または介護が必要な方

・妊娠または育児中の方

・ご家族の介護や乳幼児の育児を常にしていて、家を離れると家族の安全が保てなくなる方

(理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号を参照)

 

近年では高齢化社会に伴い、主な利用者とされる要支援者・要介護者は約725万人で10年後では1,000万人に達するとされ、今後はさらなる需要の拡大で訪問理美容師が足りなくなると予想されています。

 

必要な資格は?

訪問理美容は理容師免許・美容師免許があれば誰でも始めることができます。

 

理容師免許とは?

容師免許は理容師法に基づいた国家資格です。そのため、理容師になるには厚生労働大臣指定の養成施設(理容学校)で昼間(夜間)過程を2年以上、通信課程は3年以上のカリキュラムを受けて卒業後、国家試験(学科・実技)に合格して理容師免許を取得する必要があります。

この法律では理容師は「理容を業とする者」と定義されており、「理容」は「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」を意味します。特顔そりは理容師の資格がないと出来ないため、介護施設等でも顔そりの提供ができません。

 

美容師免許とは?

美容師免許美容師法基づいた国家資格です。そのため、理容師と同様に美容師になるには厚生労働大臣指定の養成施設(美容学校)で昼間(夜間)過程を2年以上、通信課程は3年以上のカリキュラムを受けて卒業後、国家試験(学科・実技)に合格して美容師免許を取得する必要があります。

この法律では、美容師は「美容を業とする者」と定義されており、「美容」は「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」を意味します。特にまつ毛エクステやヘアメイクなどは美容師の資格がないと提供ができません。

 

訪問理美容ではダブルライセンスがオススメ?

病院や介護施設に入居されている方は男性から女性までいるため、幅広いニーズに対応す出来た方が有利になります。男性は顔そりの他、刈り上げやスポーツ刈り等のヘアスタイルの要望が多く、女性はパーマの他、ヘアメイクの要望も多くなってきています。理容師と美容師が一緒に訪問することも多いですが、1人でどちらも対応できると人材として、より重宝されます。

理容師・美容師の両方の資格を取得するためには最短で美容師の昼間(夜間)課程を2年間・理容師の昼間(夜間)課程で2年間の合計4年間が必要でした。しかし、2018年(平成30年)からは制度改正が行われ、理容師免許・美容師免許のどちらかを取得している場合にはもう一方の免許を取得する際に、昼間(夜間)課程の1年間を修了するだけでよくなり、最短3年間でダブルライセンスが取得できるようになりました。

美容師と理容師で重複する科目を削除、再履修時間の短縮が必要だと見直されたことが制度改正の理由とされています。
これにより、片方の資格しかない人が訪問理美容の開業の際にさらに1年間の過程を修了させて仕事の幅を広げるケースも増えています。

 

参考:理容師法施行規則等の一部を改正する省令等の施行について
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2689&dataType=1&pageNo=1

 

カリキュラムと費用について

理容・美容師の資格を取得するには専門学校でカリキュラムを修了する必要があります。

昼間過程・夜間過程・通信課程の3つの学び方があり、専門学校や学び方によって費用が変わってきます。以下、特徴とかかる費用です。

・昼間過程
朝から昼にかけて2年間通学しながら学習します。費用は200~300万円と3つの中では高いですが、直接指導を受けながらじっくり学習できるので、短期間で習得したい方にオススメです。

 

・夜間過程
夕方から夜にかけて2年または3年間通学しながら学習します。費用は150~200万円と昼間過程よりも安価です。仕事などで日中は通学が難しい方にオススメです。

 

・通信課程
3年間、基本的には自宅での学習をベースとして進めます。費用は50~70万円と一番安く、スキマ時間で学習したい方費用を安く抑えたい方にオススメです。

 

訪問理美容師にあると有利な資格やスキルは?

基本的には訪問先で美容室・理容室同様にヘアカット、パーマ、カラー、シャンプー、顔そりなどの理容・美容サービスを行います。近年では外出しない方でもQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上の観点からネイルやメイクなどのサービスも需要が高まっています。

 

実際に高齢者がオシャレをすることで、
「笑顔が増えた」「喋ることが増えた」「より活発になった」
など認知症の予防・改善にもなると実証もされているため、理美容師が行うサービスの幅は今後一層広がりそうです。
但し、理美容室に来られるような健常者の方と違い、施術を行う相手の体が不自由で車イスやベット上で寝たきりであったり、認知症などの症状がある方も多いため、介護・福祉の知識や注意が必要です。

 

福祉・介護に関する資格はあった方がいい?

法律上は理容師・美容師免許があれば他の資格は必要ないですが、高齢者や障がいのある方がお客様となるため、介護・福祉関連の知識やスキルが無いと思うように施術が進められず、十分なサービスが提供できないのも事実です。
以下、訪問理美容である具体例です。

ベット上で拘縮(体の関節が動かなくなってしまった状態)により寝返りが打てず、体が動かせない方はベット上でカットを行いますが、襟足などは出来ないので、体位交換(自力で体の向きを変えることができない方の体の向きを変えること)してカットできるスペースを作りながら施術を行います。

車イスでカットをする場合にはベットから車イスへ移乗(位置の移動、乗り移ること)の介助なども必要となる場合もあります。

認知症などで、利用者の方とコミュニケーションが取れないケースも多くあります。そういった際には相手との接し方、対応方法を学んでおくとトラブルなくスムーズに施術ができます。

健常者とは違い、ちょっとしたことでも出血や骨折などの怪我をさせてしまうため、いかに相手に負担を掛けずして施術を行うことが重要です。また利用者だけではなく、周りの家族、施設職員へ邪魔や負担にならないように配慮も必要です。

さらに一括りに介護施設といっても特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなど多岐にわたり、それぞれコンセプトやニーズが異なるため、どのような種類の施設があるのかも勉強しておくと柔軟に対応ができます。

介護に関する知識を得るために、介護職員初任者研修過程修了資格を取得する理美容師もおり、持っておくと営業の際に有利に働くこともあります。ご家族や施設職員も安心して任せてもらえるからです。介護や福祉のことに対して理解があると、利用者や家族、施設職員の考えていることも分かり、スムーズなサービス提供も可能となります。

※介護職員初任者研修過程修了資格とは?
『在宅・施設を問わず、介護職として働く上で基本となる知識・技術を習得する研修』(厚生労働省より)です。約130時間の研修受講と修了試験への合格が必要となります。

 

実際の現場では介護・介助までしない方がいい?

実際の訪問理美容の現場では理美容師が施術の際に介助なども行うことは事故やトラブルを起こしてしまうリスクがあります。
そこで、介護に関する資格があっても周りの介護従事者(施設職員や家族)の方に介助や補助をお願いすることが多いです。
万が一でも、事故を起こしてしまうと損害賠償が発生したり、当事者への精神的な負担が大きくなります。

通常の理美容室と違い、訪問理美容ではサービスを受ける利用者本人の他にほとんどの場合でご家族やケアマネージャー(介護支援専門員)、施設職員など第三者がいらっしゃいますので、率直にサポートをお願いすれば、助けてくれることも多く、如何に周り人と上手くwin-winの関係を築いて連携していくかが訪問理美容を進める上では重要となってきます。

 

必要なスキルは?

技術面においては最新のヘアスタイルを追求したり、クオリティの高いカットをするよりも相手に身体的負担を掛けないように短時間で安全に施術をすることが求められます。
利用者だけではなく、施設側でも食事、リハビリ、入浴など分刻みでスケジュールが決められており、理美容室のように長く時間をかけられないことが多いです。

また、施設では男性から女性まで幅広い利用者の方が入居しているため、あらゆるヘアスタイルに対応しなければいけません。長い髪の毛は邪魔になってしまったり頭皮トラブルになるケースも多いため大半は女性でもワンレングスやボブカット、ベリーショートなどが多く、男性は裾刈り、スポーツ刈り、坊主の方が多くなります。

短時間であまり多くのことに応えれませんが、顧客満足度を上げて売上に繋げていくためにはなるべく、鏡を見せて褒めてあげたり丁寧な対応をして理美容室に近い雰囲気を演出してあげることも重要となります。

その他、コミュニケーションスキルが重要で、利用者は勿論のこと家族や施設職員との連携が必要不可欠であるため、相手の意図を汲んで柔軟に対応していく必要があります。

また施設など法人取引も多いため、ビジネスマナーや請求書のやり取りなど事務作業も必須となってきます。さらに訪問先では慣れない場所の中で、予期せぬトラブルも多いため、臨機応変に対応できることが重要となります。

 

開業時に必要なことは?

理美容師免許があれば訪問理美容を始めることはできますが、地域自治体によっては保健所に届け出が必要な場合もあります。一度、お住いの自治体へご確認ください。

また、始める前には損害賠償保険に入ることをお勧めします。万が一でも怪我をさせてしまったり、相手の物を壊してしまうと多額の賠償請求をされてしまいます。
保険料は年間1万円程度で対人、対物で保障してくれる保険が多いです。

 

まとめ

訪問理美容では理容師・美容師の資格があれば始められますが、高齢者や障がい者が相手となるため、介護・福祉に関する知識が必要です。
介護職員初任者研修課程修了資格を取得すれば、営業でアピールすることもできますが、介助まで請け負うことは多少のリスクがあります。
そのため、訪問先の介護従事者との連携も必要となってきます。